「一馬。俺達が二人いたらよかったのにな」
「は?」

練習の帰り。
英士がめずらしく用事かあるって言って先に帰っちゃったから、俺達は特にすることもなく適当な駅で降りて、適当な川原で空を見上げて寝転んでいた。

「何で俺、一人しかいないんだろ。」
「…」

あ、一馬わけわかんねーよ、って顔。

「だって俺達二人いたら便利じゃん?
勉強だって宿題だって学校だってぜ〜んぶ半分コなんだぜ!!」
ついでにトマトも!!!給食のトマトだって半分コなんだぞ。ん?わかってんのかそこらへん。
俺の死活問題なんだかんな。

「…でも、サッカーが半分にならねぇ?あとたまごサンドとりんごジュースが半分になるくらいなら嫌だな、俺」
「あ、そか。」
俺も嫌だな。
前言撤回、やっぱいらない二人なんて。
あ、でも、それって一馬のおばさんが今までの2倍りんごジュースを買って、2倍の卵サンドを作れば良い事じゃねぇ?
うわっ、絶対それでいい。決まり。はい決定ーーーーー。
つけくわえると、(いやこっちが主題だけど)

「それにさ、二人いたら英士と俺、両思いになれんじゃん」




あ、一馬、バカ顔。




「一馬が好きじゃない英士と、俺、両思いになれるじゃん?」

あ、困ってる固まってる呆けてる。一馬俺のこと好きだし。本当は今日だってこんな所じゃなく違う所で遊びたかったんだろ?友達の約束があったんだろ?
でも英士が用がある、っていなくなって、めずらしく俺と二人っきりなれるから断ったんだろ?
健気だよな、本当。涙がでちゃう〜。遊ぶ時英士を誘わなければいいのにその勇気がでないヘタレ一馬。優しい一馬。
俺なんか一馬抜きで英士といっぱい会ってるのにね。

「一馬だって俺とラブラブになれるぜ?」

なんかなんかコイツめっちゃ〜潤んでない?泣いちゃうか〜?
泣くなら泣け。気が長い俺はオマエの泣く時までまってやって、胸ぐらいは貸してやるぞ。
……あーあー、つり目おもっきしさげてすっごい困った顔して、それから言いづらそうにコッチ見てる。
あーもぅなんだようっとーしー。早く言え。気が短いんだ俺は。


「何」
「いや…そのさ」
「その?」
「・・・俺は二人目には好きななってもらわなくてもいい…や」


何。


「何で?」
「…なんかそれって、うそものみたいじゃん」
「…………あ、そ。
 せっかくのチャンスを一馬はは棒に振ってしまうのですねーんじゃ俺と英士はめでたくハッピーラブライフを満喫だイエー。
 二人目の英士もとるんじゃね−ぞーてーか、二人ともとってハーレムにしてー」

なんか普通に笑ったつもりが、無意識に口の端がつっぱった気がする。まいいけど。
そしたら一馬がやけに大きく息すった。ここら辺の空気をこれでもかってぐらいに吸った。

「俺、俺は二人いてもいても、きっと二人とも結人のこと好きだ」

なんつーことを…寒い。寒すぎる。りぼんの見すぎか?それともなかよしの仕業か。
しかもそのこと言うために、あんな息すってた訳?空気がもったいない。限りある地球の資源を大切にしましょう。
でもな、ちょっと。ほんのちょびっとだけ胸があったかいんだよ。

一馬ってたまにそゆこといってくる。
いつもは絶対いいことい言わないんだけど、バカばっかりやってもーどーしようもなくて、すぐへこむし、すぐ泣きそうになるし
表情がクルクル回って赤くなったり青くなったり忙しいヤツだし、ちょうちょ結びはできない不器用なクセして英士より鶴が綺麗に折れたり、
嫌なことあっても一生懸命隠そうとして、でもこっちにはまるわかりだったりして、ホント、俺達がついていてあげなきゃダメなんだけど。

「それに俺、今の結人に好かれたい。
英士の事好きな結人が、好きなんだ」
「なんだそれ。もしかしてお前って片思い好き?痛い系好きなの?えっ、一馬ってマゾ?
マジで!?うっわ知らなかった〜ウン年越しの友達なのに知らなかった〜一馬ったらや〜ね〜!!痛くしちゃうぞビシッ!!」

ふざけて軽く一馬の頭たたいてやったら一馬はムキになって真赤(怒ったんじゃなくて、自分のセリフに照れたんだなこの場合)
になりながら「ちげーよバカ!!」って言い返してきた。



うん、わかってる。
わかってるよ一馬。
俺も、一馬の事見てる英士が、好き。
マゾとかそーいうのなんかじゃない。(だって両思いの方が全然いいに決まってる。)
なんてゆーか、そういう、ありのままの英士が、自分の思いどうりに動いてくれない
欲しい言葉をくれない英士が、好き。切なくても。

お前、バカだよ。バカズマだよ。でもありがとう。

俺も、二人いても絶対英士の事好きになる。









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キナ臭い…。とりあえず半年前ぐらいに書いたものを掘り出してみました。
20002.3.6