「進」



目の前のホコリが付いた汚れたボールを拾い上げて、それから、
それと一緒に落ちていた勇気を俺は拾い上げた。
うす汚れた体育館倉庫の床に落ちている、汚い勇気だ。

進は、
相変わらず返事も帰さないで、黙々と先生に頼まれた通りに
バトミントンのネットを丁寧にたたんで整理している。
でも、聞こえている事は確かなんだ。
だって、ここには俺とお前しかいないんだから。

手元の時計に視線を落とすと、12:22分だと教えてくれた。
大丈夫、5時間目までにはまだ時間がある。
落ちつけ、春人。落ちつけ。


俺は聞こえないように、深く息を吐きながら、その汚れたボールを
カゴに投げ入れた。



「進は、さ」



背中ごしに、進も背中を向けているのがわかる。
うん、それでいい。
こっちを向かれたら、緊張で死にそうだ。いや死んでしまう。
俺は身体の中から出る大音量で耳が溢れるののを感じながら、
床を思いっきり睨みつけた。



「アイシールド、……好きなわけ?」



進の手が止まる。(わかりやすすぎ、     て嫌だ)
でも、それは一瞬で、だから余計動揺したみたいで痛い。
きっと気づいていないのだ。でも思いあたらないわけでもないんだ。
俺が ギュ と制服の裾を掴んだうと同時に、ネットをたたむ僅かな音が再開する。



「好き、とはどういう意味だ?」



進らしい。



「…そのまんまだよ」



苦笑が浮かんで、やっぱりそうなんだと確信した。
あの気になるっていう感情が「何か」は知識をして知ってるのに、
でも自分のそれが何かは気ずかないで、それでもって、答えを知りたくて
夢中でアイシールドを追いかけてるんだ。
ただひたすらに、 俺を置いて行く最速スピードで。
俺の、この気持ちを降ろしても、絶対についてゆけないスピードで。



「俺はアイシールドには負けられない。
 アイツを追って追って、それで絶対に捕まえてみせる。 アイツを捕まえられるのは  俺だけなんだ。だから、ライバルとして俺は、認めている。」

「進、好きっていうのはさ、女の子に感じる好きってほうの、好きだから」



進が「好き」とか「愛してる」とか、そういう単語を使わないのは知っている。

ついでにいうと、「認めてる」ってことが、進の中でどれだけ大事な位置にあって、
どれだけ大切に使われる単語で、どんなに、どんなに俺は進を好きでも、
俺はその位置にはいないことを、俺は知っている。
随分前から、知っている。



進がゆっくりこちらを振りかえるのがわかった。



「アイシールドは、男だが」

「うん」

「先ほどの言いまわしは間違っていないか」

「そうかな?」

「そうだろう」



俺もゆっくり立ち上がった。(
汚い勇気よ、どうか力を貸して)



「おかしくないと思うけど」



進と眼があって、俺はどうしても真っ直ぐみなければならないと思っていた。
でもずれる視線はどうしようもない。
神様。
俺は、 そんなに悪い事をしでかすんでしょうか。
やましいことなど何もないのに、視線をあわすことができません。
好きという気持ちは、誰が誰にいだいても、いいものなんじゃないのですか、
それとも、俺は進を好きでいてはいけないのですか。
おれは、進を好きでいてはいけないのですか そんなにおかしい事なのですか



「おかしいだろう」



進が俺を見上げて、腕を組んだ。

真黒の瞳がかちあう。
俺の白目がぎょろっと、大きくなったのがわかった。


ああ 俺 今否定された





その瞬間、

俺は進のスピアよりはやくはやく、とてもはやく動いた。



「ちょ、 さく ら      …ばッ! 」



噛み付くようなキスだ。
進がたたんだネットを踏みつけて、ぐちゃぐちゃにして、口内もぐちゃぐちゃにして、
後方の白くて重厚な体育倉庫のドアに無理矢理押しつけて、そんでもって俺の気持ちも無理矢理押し付けた。
のしもつけて。

離したら、きっとおしまいだ。

俺は唇の角度を変えようともしないで、そのまま、呆然としている進の白い学ランの
チャックに手をかけた。
冷たい金属のつまみを全身全霊で引き降ろす。

ワイドレシーバー、走ります。
ワイドレシーバー、走ります。

頭の中で妙な解説が飛んだ。(なんで、こんな時までアメフトなんだよ、ああ、  ああそれはきっと)

と 同時に進の手が伸びて、俺の手首を獲ろうとして、




「進のせいだ!」



(守備の選手の間をかいくぐって、それが、俺の仕事です。)



「俺がアメフト続けてるのも俺がアイドルになったのも俺がこんなに苦しいのも俺がこんなことしなくちゃいけないのも俺が進のこと好きなのも全部全部進のせいだ!進のせいなんだ!!」



進の手は、俺の手首を掴みそこなった。



「…………さ」

「好きなんだ」



チャックがタッチダウンした。
カチャリと、大きく外れた音がした。(もしかしたら、俺の脳みそのネジがとれた音かもしれない)



「進、おれ、」



その先は声にだしたけど、かすれてしまった。
聞こえただろうか。
睫毛が誘導する、俯いた先の進の手が震えている。
聞こえたんだろう。



「進」



眼の前の手をとった。
ビク、と動いたのがわかって、つられて自分も動揺して変に手に力がはいった。



「・・さ・ ・… 桜庭、俺は」



進も喉が乾いてる。
貼りつくような声が飛出して、ひっくりかえって去っていった。

でも、ダメだ。続きは言わせない。



「抱いてよ」



俺は、白いズボンをおろした。
衣ずれの音が大きく響く。
ただでさえもう冬が近いというのに、更にこんな湿ったような部屋の冷たい外気が
俺を刺した。 いや、指を差したのかも。
こんな、みじめな俺を笑って。

変に笑いを堪えた俺とこの行動、に進はいよいよ、白いドアへぴったりと貼りついた。
でも、俺も負けじと掴んだ手をひっぱる。




とられたくない。

なんで、 なんで、後からしゃしゃり出てきた、あいつに、




俺が本気でひっぱると、進も本気で俺の手を払った。





俺の方が、ずっと進を見てきたのに、ずっとずっと側にいたのに、
俺の方が、進のこと、好きなのに







払われた手でもう一度進を掴もうとしたけど、反対の手で思いきり振り払われた。
そのままタックルをかけられたように大きく突き飛ばされて、ロクに受身も取れないまま無様にマットの上に転がった時には、進はすでに白いドアを開け放って飛出していた頃だった。


倒れた視線の先に、ぐちゃぐちゃのネットが見える。
それが更に、前が見えなくなるぐらいにかすんできた。





「どうして、早いもの勝ちじゃないんだよ…………」





振り払われた時にかすめ見た、進の顔が恐怖を浮かべていた。



ごめんなさい。



進、ごめんなさい。






ついにはネットだけじゃなく、全ての景色が混ざり合って、眼から流れて出ていった。

このまま、俺はここで枯れ死にたいと思った。


























「桜庭」



ギ  と、白いドアが音を立ててまた開いた。




「………………高見さん」




長身の制服が隙間から俺を見て、「あーあ」という顔をした。
それから、なるべくドアを開けないようにして入ってきてくれた。



「なんで、高見さんがここにいるんですか?」

「その前に」



まった、と左手で俺を制止してから、ふわり と、俺の前にしゃがんだ高見さんは、刺されっぱなしの足に上着を掛けてくれた。



「ズボンぐらい履きなよ。冷えるから」

「…………もしかして、全部聞いてました?」



高見さんは苦笑しながら、いいや、と言った。



「体育館から進がすごい勢いで飛び出してくるのが見えたから、何かと思ってさ」

「………」



すごい勢い、か。
なんだか想像できる。試合みたいな高速の早さで掛けぬけたんだろう。
俺から。逃げたんだ。





泣きたい。

何で、俺、こんなことしようと思ったんだろう。
じわ、とたまった涙はとてもうっとおしかった。



「……あー、コラコラ、そんなこすったら赤くなるぞ」



両手でガシガシと上着の袖を使って拭っていたら、優しく取り上げられて、代わりにポケットから取り出したバーバリーのハンカチをあてがわされた。
あ、微妙に、高見さんの匂いがする。
ふんわりと暖かい、太陽の匂い。
眼を閉じると、高見さんはそのまま何度か押し当てるように涙を拭ってくれた。










「…………………高見さん」

「ん?」






























「抱いて」





ペチ。




急に、冷えた手で、左頬を打たれた。(といっても、軽くなんだけど)



てっきり、

驚いた風でもなく、呆れた風でもなく、困ったな、とかそういう具合のリアクションが
返って来ると思ったのに。
驚いてあおぎ見ると、高見さんは眼鏡の奥で、少し怒った風だった。



「俺、自暴自棄の奴を抱く気はないよ」



ぎゅっと眉根を寄せたのが見えた。



じぼうじき。 じぼうじき。
何の意味もなく,頭の中でくりかえす。
自分を粗末にすること。投げやりになること。



粗末。



粗末にする。














今の俺にピッタリだ。



「ホラ、桜庭起きて」



高見さんは、ぐちゃぐちゃになっていたズボンを拾ってきてくれて、
横倒しのボロボロな俺を、きっちりと座れる体制に助け起こす。
俺の乾いて死んだ魚のような眼に写る高見さんは、少なくともさっきの
怒りは消えたみたいだった。



「脇の水道で顔洗おう。それじゃ外あるけないよ」



酷い顔だからね。
アイドル台無し!

と、高見さんは、たぶん俺を和ませる為にワザとおどけて言ってくれた。
その優しさに、また泣きそうになった。








ごめんなさい。     高見さん、  本当に、









「ごめんなさい…」

「いいよ、」

「高見さん、ホント、ごめんなさい……」

「いいよ、気にしてないし。今のはもう、忘れたから」


「ほんと、ごめんなさい……!」






「だから、いいってさくら



高見さんは、手の冷たさと反対にその薄い唇はすごく暖かかった。
喋り掛けの半開きの口に半場強引に舌をねじ込むと、
俺が誰なのかわからなくなるように、頭がもうろうとするように、夢中で
絡ませて、それで、何回も何回も貪るようにキスを重ねた。





ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、





俺は折角起こしてもらった体を、全重力をもって再度マットに沈めた。
高見さんと一緒に。それから、マットよりも深くい深いところに、良心も沈めた。



「… っ  はッ    、桜庭 !」

久々に空気を吸った口は、俺を叱咤しようとしたのだろう。
だけど、俺はそれも聞かずに、ただ高見さんの手をとって、その手を俺の高ぶる
股間へと、あてがった。




「たかみさん」



そう、呼ぶと、

高見さんは、つらそうに瞼を閉じた。
案外長い睫毛が影を落とす。
俺には、高見さんが瞼の裏に何を見たのかはわからなかった。

でも、再度開いた瞳には、光も何も写っていないのだけはわかった。



「桜庭、1回しか、いわないぞ」

「…うん」

























「やめないから」


















....................................................



こいつら、5限はじまっとることに気ずいてない。


と、いうわけでごめんなさい。
眠くてフラフラしながら書いているので、もう何が何だかただの頭悪いSSになっちまいました!
しかもやたらラバが黒く攻めっぽい!それにただヤりたいだけの子になってしまった・・!
すまん・・・全て俺の責任だ!!(ほんとにな)

ラバはもっと白いんだ〜い…・・・・うう・・・・・
本当はもっと白く書きたかったんですが、何せ寝ずの思いつきで書いたもので、
何も練る時間がなかったので、ああすみません。ちまちま直します。
ちなみに読み返すわけがないので、いろいろ間違っていても気にしないでください。


これもすべては私にムサヒルらぶちゅーSSなんぞを送りつけてきた奴のせいです。
勝負は受けてたつ!
やつがちゅーネタだったんで、微エロ風味にしてみまちた。
このあとの〜体育倉庫でタッチダァーゥン-☆〜は、奴が微エロ書いてきたら
し返しとして送りつけてやります。
てゆうか、高ラバは妄想だけはいっぱいあるので、(ただ書く時間がない・テニスでいっぱいいっぱい)いつでも受けてたつ。むしろこい。寝ないで打ち返してくれるわ。
ラバ受け女の根性をみるがよい!