せんせい、おねがいだから、ゆきむらをたすけてあげてください。
おれたちのたいせつなゆきむらをたすけてください。









































■■■■■■■■■■■■■■■








「ブン先輩」



赤也がめずらしく一緒に帰ろうと言ってきた。(それも掃除の時間にイキナリ三年の教室に来て、だ)
少し、    いや結構びっくりした。

どれくらいかというと、手にしてた雑巾で近くにいたジャッカルの頭を、綺麗〜に髪の毛が生えなくなるくらい丁寧に
磨くぐらいびっくりした。(あ、たとえ話だからね!)


たとえば雅治に、「何かおごってもらおう」という魂胆で赤也がそう言うのならわかる。
(雅治は結構気前よくおごってくれるんだよね)(ただし、賭け事・主にマージャンで連敗してなければ)
あとは、ジャッカルとどっかで練習して帰るとかー
比呂士に勉強教わるとかー
そういうんだったらわかるんだけど。


俺? 俺と?


俺たち、ライバルなんだけど。
幸村の膝枕をかけて争う、ライバルなんだけど!


でも、あんまりにも赤也が真剣だったから、俺の眼を見つめられないほど真剣だったから、
だから、俺はちょっとワックス臭くなったジャッカルの頭をほおっておいて、ついでに雑巾を押しつけて、
教室掃除を途中で抜け出して赤也と一緒に帰ることにした。


俺が慌てて鞄をひっつかんで来たというのに、赤也は、階段を下りるときも黙って、
下駄箱で靴を変える時も黙って、校門をでるところにさしかかっても
だまーって歩いているのでもしかして、これはもしかして新手のイジメか?
とか、考えだしてしまった。


なんだよ。
お前だってこの間、俺に黙って真田と一緒に幸村のお見舞いにいったくせにさぁ。
俺の方が、し返し1回たまってんだからな。


このし返しも含めて今度幸村にデートしてもらおうと思い、(ナイスアイデアだ俺)
壊れたチャックを閉めているのに閉めた側から外れていくカバンの内ポケットから
ケータイを取り出すと、幸村にメールをおくることにした。
折りたたみを開くと、待ち受けの怒羅え門が「ほげぇあ」と声を出した。
やば。
バイブにするの忘れてた。授業中にならなくてよかったァー!


…でもよく考えると、俺には半日メールがこなかった訳で、それはつまり半日俺はいらない人間だった訳で、
それはそれでなんで迷惑メールの一つもこないんだと無償にムカついた。



「あームカツクからジャッカルに八つ当たりしよう」



俺はジャッカルにメールを送ることにした。
軽やかに短縮で入っているメアド(俺達って仲良しダブルス♪)に俺はうちこんだ。






 送信〔1/200〕
 ■ ジャッカル
 ○ 16:11
 ■ 無題 
 _______

ムカツクから明日からヅラ被ってきて


 
-----END-----






俺は送信終了の文字がでると、iモードを切らないままブックマークから DOKOMOのサービスにアクセスして
すみやかにジャッカルを着信拒否とメール拒否に設定した。
これで明日まで俺と連絡はとれないぜ。イコール拒否はできないのだ!
これぞ鉄壁のディフェンス! ははは!ははははは〜 ・・・・・・・・やっぱつまんない。
ため息をひとつついて横を見やると、赤也は依然黙ったまま道路とお見合いをしていた。



「赤也〜話って何なわけ?」



大通りの交差点の信号が赤で、俺はおろしたてのコンバースが堅いことに少し不快感を感じながら、 何回か道を足でこづいた。
まだ掃除をしている人が多いのだろう。 俺たちしかこの場にいなかった。



「何かわかんないけど、相談ならはやく言えよ。せっかく部活サボッたんだからさぁ〜」



自分で言っておいて何だけど、まぁよく考えると決勝戦も近いのに部活をサボった事になるんだよな。
真田は怒るかな。 ・・・・・・・怒るよなぁ〜。 絶対でるんだよ、アレだよ、アレ「たるんどる」とか言うんだよ。
オヤジくさいもんな・・・たるんどるって。お前アレだよアレ、アイシールドの進清十郎みたいだぞ。
(進の方が年上のようで若いけど)

でも、今日はたしかにたるんでるのかもしれないから、明日会ったら一番に謝ろう。
「ごめんな、すべて赤也の責任だから」   って。



「まるい」

「え?まるい?もっとこう、バイオレンス的に言った方がいいかな?」

「まる」


「ごめんっていってんだろ聞こえねぇのかゴラァ真田ァ!全ては赤也が悪いんだよッ 
ペッ

「……ブン」

「ぶん殴る!?そこで!?」

「た」

「た?」

「……丸井、何をしている」

「え!」



俺が背中に毛がいきなり生えてきそうなぞわぞわ感を背負ってふりかえると、
そこには真田が蓮ニと揃ってテニスバックを背負って立っていた。



「真田!何してんだよこんな所で!!」



うわ〜いやだ〜絶対聞こえてたよさっきの話、だって真田がこっちみてるもんガン見してるもん
きっと今知識を総動員させているところなんだ。



「…今何か真田がどうとか」

「き・聞き間違いだろ〜」

「ゴラぁとか」

「独り言独り言」

「幸村たまらんとか」

「それはお前の独り言だろ!」



言った瞬間真田の顔がものすごい顔になったけど、それよりもその後ろの柳の方がめちゃめちゃ怖かったので、
(たぶん くわっ って効果音だった) 俺は黙って真田の顔を見ているフリをした。
あ、ああ   柳の視線が痛 い   なァ・・・



「て、ゆーか、真田は部活サボッてどこいくの?」

「幸村の見舞いだが?」

「え!!」



なんだそれは俺は聞いてないぞ! お見舞いは毎週土曜じゃなかったのかよ!?
しかしこれはチャンスだ幸村のところにどうどうと居座り寝取るチャンスだ!



「俺も俺も俺もいくーーーー!!」



ハーイ!と元気よくあげた手は空いっぱいに広がってわくわくと動いた。
幸村に会ったら〜とりあえず、ぶりっこしつつ膝枕にありつこう。
そんでもって顔には出さないけど幸村と真田を引き裂く達人(と書いてマスター)
の蓮司に真田のお持ち帰りをお願いしよう。頼まなくてもやってくれるけど。



「丸井、お前」

「何?」

「部活をサボったのか?」

「あっは、何だよいまさら〜!真田も柳もそうなんだろ?」



俺が笑って肩を叩くと、真田はものすごく不機嫌な顔をした。
あえていうなら、酢豚の上にパイナップルが乗っかって出てきたのをまのあたりにした時みたいな。
えー俺何も悪いこと言ってないけど。 すると、真田は急に俺に向かって唾をはきちらす勢いというか実際散らして



「たるんどる!!!」



そういって、ちゃっかり裏拳を飛ばしてきた。



「ちょ、う  わっ  !」



とっさにしゃがんだら、俺の頬をすれて拳は主に空を殴った。
あまりの勢いに真田はそのまま一回転をしてもとの場所に戻る。



「部活をさぼるとは何事だ!われわれ立海にはそんな時間はない!」

「いやそれは俺のセリフだったんだけど…」

「いいか、幸村の為に負けることは許されない…!」

「ちょっと、柳いいかげん真田を止め・・・」



なんたらかんたら一人の世界に入った真田を引き戻せるのは柳しかいない。
しかし、



「真田・・・そんなに幸村がいいか・・・!」



般若がそこにいた。



「柳おちついておちついて」



どうどう!ここは人の往来だから!!
俺がどうにもこうにも暴れる二人をなだめて、あ、てゆうか、赤也は何やってんだよ!
後輩なら少しくらいは手伝えってーーの!



「おい赤也!」



ヤケクソで赤也の名前を呼んだら、赤也はうつむいていた顔を上げてまっすぐ俺を見た。
さっきまで何の反応もなかった赤也が、今度はしっかりすぎるぐらいに俺を捕らえたから、
不意に黒い影がかかったドキリを俺の脳がした。
赤也はゆっくり喋った。「ブン先輩、俺、」  それから、視線は横にずれた。








「幸村部長のお見舞いは行きません」


「は?」








赤也は、俺たち三人を見てられないといった風に目を伏せて、失礼します、と きびすを返して
しましまの道路を早足、いや、駆け足、でわたりだす。


赤也が幸村の見舞いに行かない?




















ありえない。





俺の道路の信号と、頭の信号が同時に点滅した。
きけんですよ。
ひじょうにきけんです。
すぐさま俺はかかとの不具合なコンバースを上手におだてて、地面を蹴った。



「真田、柳、俺もやっぱ見舞いいかねぇ!」



返事は聞かずに背中を向けた。
もうすでに信号が赤になったけれど、そんなことはかまわず道路を走り抜けた。















・・・・・・・・・


















「赤也!」



信号を渡ってすぐ右に曲がったところにある小さな公園で、赤也はただ突っ立っていた。
正直、あのまま見失ったら何処へ行くかわからなかったから (だって幸村の病室以外に、
俺達って何処へもいかないし) 俺はほっとして、公園へ足を踏み入れた。
ブランコに乗るわけでもなく、象さんのすべりだいにしゃがみこむこともなく、砂場に真ん中で
突っ立っていた。
俺は、すこし躊躇ってから(靴に砂はいるじゃん)砂場の淵に足をかけて少し声をあげた。



「お前、どうしたの」



赤也はやっぱり黙ったままだったから、俺は続けた。



「幸村のお見舞い行かないって、おまえオカシイよ。絶対オカシイ。」



そんなの気持ち悪いし。
ミルクキャンディーをとりだそうとしてまさぐったズボンのポケットから、
ハンカチは上手く取り出せたのに、かわりにキャンディーは落ちた。
ガチンと盛大に音がして俺は割れたのかと思って慌ててしゃがみこんでそれを拾う。




「幸村部長の病気ってなんですか」




唐突に、赤也の声が振ってきた。
ミルクキャンディーを掴んだまま、その場でしゃがみこんだまま、俺は赤也を見上げた。
太陽に背を向けているその顔は、暗くてよく見えなかったけどたぶん、強張っている。



「…そんなん知って、どうすんの」

「知ってるんですか?」

「赤也」

「知ってるんですね?」

「だから、知ってどうすんのさ」

「何の病気なんですか」



人の話を聞け。
赤也がアホだアホだとは思ってたけど、日本語が通じないまでに重傷だとは思わなかった。
まぁ眼が充血しまくる時点で、すでに地球外生命体みたいだとは思ってたけど。
ため息をついて俺が立ち上がると、赤也にわざと視線を合わせた。



「今日、



今日、クラスのダチに言われて」

「何を?」

「お前の所の部長って、不治の病なの?って」

「それはまた唐突だな」



唐突と言えば、幸村が関東大会が始まってすぐに病気で倒れたのも唐突だったけど。
(それまで、俺が下心のついてない方の好き、で幸村を見ていた頃)
ちょっと懐かしい。(もう随分前から好きなような気がする)
でも幸村が病気にかかってなかったら、俺は幸村の事好きにならなかったから、もしかしなくても
それを喜としている俺がいるのかもしれない。



「ブン先輩、部長って何の病気なんですか?」



赤也は砂場の砂を掻き揚げながら一歩踏み出した。
砂が宙を舞う。俺の心も宙を舞う。



「俺も、」



言い出すことにちょっとムカついたけど、でもこんな所で嘘をついたってしょうがないので
見栄を張ることはやめた。



「知らないんだ」

「え」



うっわ、ムカつく!



「何その顔…」

「いや、だって…3年の先輩は皆知ってるものだと思ってて」

「どーせ俺は3年なのに知らないのは俺だけだよッ」



真田と柳が知ってるのは当然だけど、比呂士も、雅治も、それになにより、
なーんで 俺 が 知 ら な い の に ジ ャ ッ カ ル が 知 っ て る ん だ よ!
(ほんとこれが一番
んだよ!)
比呂士は絶対教えてくれないいし、雅治にははぐらかされるし、幸村には困った顔されるし、
しかもジャッカルは吐かないし!



「何で教えて貰ってないんですか?」

「俺が聞きてー!比呂士はお前が何しでかすかわからないから≠チていうんだけど!」

「それは確かに」

「何だそれ!ってゆか何しでかすかわからない病気って何だよ」



………
そうだよな。
俺が何か手だしが出来る病気ってなんなんだよ?
別に医学とかできるわけじゃないし。……あ、もしかして、心臓の手術とか?
誰か殺しかねないってこと?(そんなアホな!)でもそんなんだったら、テニスの試合とか
バンバンできないよな〜。
うーん。何の病気なんだろう。俺が何かできる病気のテニスはできる病気…

うーん

うーーーーーーーん


うーーーーーーーーーーーーーん




「恋の病?」



赤也が突然空を見上げながら言った。



「恋の病?……
で入院するわけねーだろバーーーカッ!」

「いやでも、ブン先輩」



幸村部長なら、ありえます。

(いやありえないだろ!)

何故かやけに自信に満ちた顔の赤也は、さっきまでの暗さをぴょんと飛び越して、
砂場から飛び出た。
そんでもって、遠くを見つめながら



「恋の病かぁ……ブン先輩には教えられないわけだ……」



赤也の思考は飛びすぎていてよくわからない。



「は?…何でそうなるんだよ?」



「だって、恋の病の相手は俺だから」






俺は手加減なしで脳天めがけてラケットを振り下ろした。







「ひ…人殺し!!」

「何勝手な事言ってんだよ!」

「だからブン先輩には教えられないんですよー!人殺しかねないから!!」

「うるせ!人殺しじゃなくて赤也殺しだ!」



赤也は涙目になりながら割れそうな頭を押さえるように頭をぎゅうっと抱えて、俺を睨んだ。
でも、その次の瞬間には にかっ と笑っていた。



「ま、幸村部長が俺に恋の病なのは変わらないからいいんですけど!」



ムカツク!後輩のクセに!
俺は今度はラケットのかわりに大きい大きい声で赤也をぶん殴った。




「幸村は俺に恋の病なんだ!」











***************
















「幸村ーーーーーーーーーーー!!!!!」





ガラッッ!!




俺達は一斉に病室へ掛けこんだ。
ベッドをはさんで剥こう側にいた幸村の為にリンゴ剥いてる比呂士と、
何故か剥いた側から食ってる雅治と、なんか窓際で早く帰りたそうな連司と
こっち側でなんかすごい顔して怒ってる真田をおしのけて、俺と赤也は幸村に走り寄った。




「幸村が好きなのは俺だよね!!」
「部長の病の相手は俺ですよね!!」




ムッ。



「俺が恋の病の相手!!」
「俺ですよ!!」
「俺ったら俺だっての!後輩のクセに生意気!」
「俺ですってば先輩ぶらないでください!」

「俺!」

「俺!!!」




「…何の話?二人とも」



「幸村の病気の話!!」



幸村はオカシイのか、困ったのか、どっちにしろ笑っていた。
眉根を寄せながら。



「おまえらなーもぐもぐー個室とはいえーもぐもぐー病院なんだから少しは静かにしんしゃ……
あたっ」

「お前は勝手にリンゴ食べるな!」



今度やったら刺すぞ。と、右手の果物ナイフを振りかざつつ、比呂士はお見舞いのフルーツ籠の中から
もういっこリンゴを取り出した。
また器用にリンゴうさぎができてゆく。
雅治はちぇーっと言いながら、おとなしく席についたようだった。



「・…今、主に恋の病とか聞こえたんだが…丸井。」


どういうことか説明しろ。
真田がこっちを向いていつもより3割増しで眉間にシワをよせていた。
(って真田が恋の病っていうと結構笑える)



「そうッスよ!幸村部長!」



あっこら赤也!勝手に幸村の手を握ってるんじゃねー!
さりげにベット脇につけていた赤也がなれなれしくも幸村の両手をがしっと掴んだ。



「どうしたの、赤也」


「幸村部長!部長の恋の病の相手は俺ですよね!?」

「たるんどる!!!」

「いたっ!」



あーあ。
バカ赤也が単刀直入に聞いたから、案の定真田に殴られてやんの!バッカでー。
真田は幸村のことになるとうっさいからね。
あいつ、ぜったいホモだぜ。
真田と目をあわすと妊娠するから眼をあわすなってジャッカルに言ったら
半分信じたあの時は楽しかったなァ。


……あれ?………ジャッカル? 



「てゆうか、俺ヅラなんかもってないんだけど」



ケータイ画面を見ながらジャッカルが俺の肩を叩いた。



「うわっ!!ちょっ、お前いつからいた!?」

「さっきからずっといたけど……」




てゆーか、幸村のところのにいたのかよ! しまぅった!計画失敗だ!
やっぱ ジャッカルは鉄壁のディフェンスだった・・!
俺が今まさ気付いた風な態度にジャッカルは多少傷ついたみたいだった。
俺って…とかいいながら側の椅子をひっぱりよせて泣きついていた。

ごめん。俺幸村しか見てないんだってば。



「えーと、
…とりあえず、俺のケータイお前の着信とメール拒否してあるから解除しておいて」



愛機505iを投げてやったら、文句を言いながらいそいそジャッカルはケータイをいじりはじめた。
うん、これで仲直り完了。

俺は幸村に向き直った。



「えーと、赤也?恋の病って何…?」

「幸村部長が恋の病なんです!」

「……それで?」

「それで俺かブン先輩かどっちに恋の病なのかハッキリしてください!」

「……………え・えーーーっと」



すでに半身を乗り出している赤也に俺は突っ込んで、その手を振り払いながら
代わりに俺がしっかりと握る。幸村の手は赤也の温もりも手伝って、ほんのり暖かかった。



「俺だよね?」

「…ブン太までそういうこというの?」



ちょっと呆れたように、でも、幸村は楽しそうに笑ってくれた。
後ろで真田の視線を感じるが、ほおっておこう。
コレは真田にはできない芸当だから。



「っていうか、お前ら病院なんだからいい加減静かにしろよ…」



比呂士がやっとリンゴを全てりんごに向き終わって、綺麗に皿にならべて
枕元のテーブルに持って来た。
幸村はありがとうと言って、皿から2個とって、一個は自分に、もう一個は俺に加えさせてくれた。
すっぱいリンゴを加えて、俺の口から唾がたれそうになったのを慌てて上を向いて納めた時だった。



「幸村くーん、検診の時間ですよ」



ピンクの服来た看護婦さんが、先生を連れてやってきた。
看護婦さんは、カルテやら薬やら体温計やら、何やら物騒なものばかり抱えていた。
先生は何でも治せるようなちょっと強面な、BJみたいな頼もしい先生だった。



「もうそんな時間か……よし、帰るぞ」



真田が側にあったテニスバックを持ち上げた。
それに続いて、皆もそれぞれバックを肩にかけてその場から立ち上がる。



「じゃ〜またな、幸村!」

「幸村、リンゴは早めに食べてくれ。あと、数学のノートのコピーは明日またもってくるから」



ぴょんっと飛び出た雅治に続いて比呂士が、またな、と蓮司が、



「えーまだどっちが恋の相手か決着ついてないのに〜」

「幸村はそんな病気じゃない」



赤也の首根っこを引っ掴んで、真田が俺の横を通りすぎる。



「幸村……また明日」

「うん。真田」



手をおだやかにふった幸村を真田が捕えてから、病室を出ていく。
それからジャッカルがさきに行くぞ、と通りすぎていった。
急に、俺と幸村と先生と看護婦しかいなくなって、病室はガランと寂しくなった。



「ブン太、ほら、荷物」

「あ、…うん」



幸村の足元においてあったバッグを肩にかけると、俺はもう一度幸村の枕元へ駆け寄った。
それで、俺はコッソリ聞いたんだ。



「幸村。幸村は本当はなんの病気なの?」



耳打した俺に、いつものように幸村は笑いながら、でもこっそり、困った顔をしながら
俺に耳打してくれた。






恋の病かな?





俺は幸村の顔をみた。
幸村は、暖かそうに笑っていた。






入口で皆を見送っていた先生と看護婦さんに挨拶して、俺は病室をでた。
そんでもって、白くて冷たい廊下を3歩程歩いてから、俺は急いで、引き返した。

病室のドアをぶっぱなして、俺はいった。











「先生!お願いだから幸村を助けてください!
 俺達の、大切な幸村をたすけてください!」











「それから、」








「先生、お願いだから、俺達の病気はなおさないでください」








わけがわからないという顔と、びっくりした顔達ををかすめ見て、俺は返事は聞かないまま、そのまま勢いよくドアを閉めた。



今更になって、また履き心地が悪くなってきたコンバースでエレベ−ターまで全速力で掛けていく。
遅いぞ、という真田にごめんと謝りながら、比呂士が「開」を押しっぱなしで待っていてくれたエレベーターに
乗りこんだ。
















先生。







病気にかかっているのは幸村だけじゃない。


俺も病なんです、先生。


恋の病なんです。






脳みそがわくような、そんな恋の病です。















******************************

捏造録:その1 ジャッカルの立場。
     その2 赤也がブン太のことをブン先輩とか呼んでるところ。
     その3 ブン太と赤也がアホなとこ。


決定録:    真田はナチュホモ


ギャグなんだか、シリアスなんだか。

立海は幸村を中心にまわってんだ〜よ〜! ということと、
立海は家族みたいなんだよ、という感じを書こうと思ったら、見事横にそれました。

ブン太が幸村を好きな理由は捏造してまた書きます〜あ〜立海大好き〜!