─ あたしと貴方の朝の関係 ─


今日もまた来るのかな?
今日はどんな格好なんだろう?制服って判りきってるけど其処は乙女の妄想よ。
15歳。
嗚呼、恋してるのね、あたし。





「あ・・・・・来た」

何時もの朝の味気ない駅のホーム。
けど、あたしにはあの人の周りにだけ薔薇の花弁が散ってるんだから。
嗚呼もうカッコ良いったらありゃしないわよ。
畜生、割り込んできた其処のオヤジどきなさいよ見えないじゃない!
まって、あの人は何処の車両?
くっそぉオヤジめ。





事の発端はそう、確か二〜三週間前。
その日、私は何時ものようにホームで列車を待ってた。
けど、朝から出来上がっちゃってるどっかの酒臭いオヤジが突進してきて。
あたしは線路の上に落ちそうになった。
怖くて、ぎゅっと目を瞑って落下を待った。
でもいくら待っても衝撃どころか小さな痛みも感じない。
そうっと目を開けた、その先。

あたしの王子様。
あたしの王子様が、あたしの体を抱えててくれた。
大きな手で、支えててくれたのよ。
運命の出逢いなんてハナっから信じてなかったけど、この時ばかりは信じざるを得なかったわ。

司馬葵。
登校して朝イチで友達に聞いた。
司馬葵しばあおいシバアオイ。よっしゃ覚えた。





『扉閉まりま〜す・・・・御注意ください・・・』

運転手の間延びした声なんか殆ど耳に入らない。
あたしは、一生懸命司馬を探してた。
何処?何処なのよ。ああんあのオヤジ末代まで祟ってやるんだから!

「オハヨ〜シバくん!」

ちょっとまて、今司馬って言ったわね?
高めの声。まさか女?
確かめなくちゃ。というかさっきも思ったけど何処よ。

「今日は朝練ないんだよね?だったら一緒にゲームしようよ〜」

ゲーム?朝練?
朝練ってことは野球部の友達かしら?
司馬の友達でゲーム好きといえば兎丸しか居ないわね。
ふふんこんなのはリサーチ済みなんだから!
・・・・・じゃなかった、探さなきゃ。
確か声はこっちから聞こえてきたよね?

「ヤだ?も〜ぅシバくんてば〜」

居た。司馬葵。・・・・と兎丸比乃。
一番前の車両の右側の真ん中に二人並んで座ってる。
あたしはじりじり接近していって、二人の座っている座席の左斜め後ろに落ち着いた。

「ねぇねぇ、昨日のHEY!HEY!HEY!観た〜?」

くそ〜、良いなぁ二人で昨日のテレビの話しなんかしちゃって。
主に話すのが兎丸で、聞き手が司馬みたいだけど。
嗚呼、あたしも混ざりたい。
司馬がチェックしてそうな番組は全部チェックしてんのに。
とかなんとか思ってたら、降りるべき駅にもう着いていた。

「降りなきゃ!見失っちゃう」

司馬と兎丸はもう降りてて、学校へ向かって歩き出してた。
見失うわよ早く行かなくちゃ。
人の波に乗って、ホームと列車の僅かな隙間を跳び越そうとしたら。

「きゃあっ・・・・」

なにやら遅刻しそうで急いでた学生にぶつかって、渡ろうとしたタイミングを狂わされる。
畜生、もうちょっと早く起きて一本前の列車に乗れば余裕で間に合うじゃない。
これだからサイキンの学生は。
あたしなんか30分かけて朝飯食って余裕なんだぞ。
いやいや今はそれどころじゃない。
ヤバイ、隙間に足が引っかかって・・・・躓く。

「?シバくん?」

どっか遠くのほうで兎丸の不思議そうな声が聞こえた。
司馬、また司馬が助けてくれないかな。
そんなこと思いながら、あたしはあの時と同じように衝撃に備えてぎゅっと目を瞑った。
あの時と同じように。

何時までも衝撃が来ないから、やっぱりあの時と同じように目を開ける。
嗚呼、あたしの王子様。
王子様はやっぱり助けに来てくれたのね。
だからスキ、ダイスキよ。

「シバくん、どうしたの〜・・・って、誰?その女の子」

兎丸がひょこひょことやってきて、ぎょっとしたように言う。
だってそうよね、友達がイキナリ居なくなって、しかも女と絡み合って倒れてたら。
司馬はほけーっとしてるあたしの腕を掴んで立たせ、じっと見つめてきた。

「・・・・・・・・・・・・・」

口でこそ何も言わないけど、なんとなぁく判る。
すごく心配そうな表情をして、あたしの顔を覗き込んでくる。
うわあ生きてて良かった。
ふつふつと喜びを噛み締めつつ、あたしは自分でも信じられないくらい大胆なことを口走った。

「ごめんよ、司馬。ところでさ、どうせだから一緒にガッコ行かない?」





でかしたわよ自分。
今、あたしは司馬と登校路を歩いているのね嬉しい。
隣の司馬を挟んで、さっきからぴーちくぱーちく喋くってる兎丸が居るけど気にもならないわよ。
嗚呼神様有難う御座います。
でももう靴箱のまえに着いちゃった。

「・・・・それじゃ、今度は転ばないように気をつけてね、だって!」

兎丸がにこやかに司馬の通訳をして、仲良さげに自分たちの教室へ向かう。
ホントは司馬自身の声で言って欲しかったけど、あたしはそこまで欲張りじゃないわ。
階段を上がっていく司馬が完全に見えなくなると、世界が暗くなった気がする。

「うん、でも今日の一件であたしのこと覚えてはくれたよね」

るんるんと独り言を呟いて、あたしも教室へ向かう。
階段を上っている途中で、あたしのクラスメイト、久美子に出会った。

「あ、久美子おっはー」

「おっはーはもう古いからやめなって何時も言ってるでしょ、おはよう

「あーはいはい。今朝のあたしはものすんごくハッピィだからそんなの気にしてなかったわ。ところでそんなに急いでどうしたの?」

「今日調理実習でしょ?だけど材料忘れちゃって、これから親が持ってきてくれるの」

調理実習・・・・?
ぱたぱたと階段を降りていく友の背中を見つめながら、あたしは首を捻る。
首を捻りつつもそろそろチャイムが鳴るから階段を上がって教室へ入る。
調理実習ねぇ。ナニ作るんだったっけ?

「・・・でさ、今日の調理実習のクッキー、誰にあげる〜?・・・・」

教室の中の誰かの会話。
すっごく嬉しそうに話すから筒抜けよ・・・・。
ふむ。クッキーを作るのね?
というか・・・持ってきた材料で気付けあたし・・・。

「誰にあげる〜・・・・か。あたしはもちろん司馬ね」

うふふ、今日のお礼ってことで作ったクッキーあげてみようかな。
あーでも、いっつも司馬にくっついてる兎丸とか絶対邪魔よね。
できれば二人っきりの時にあげたいし。
そしたら、必然的に部活の後を狙うしかないわね。

決戦は、放課後。





「バイバイッ!」

友が呆気にとられるくらいの勢いでカバンに荷物を詰め込むと、あたしはダッシュで靴箱にかけていった。
クッキーは上手に焼けた。
あとはあたしのがんばりようでどうにかなるわ。
嗚呼神様仏様、どうかあたしを見守っていて。

「くっそぅ・・・グラウンドには居ないわね・・・」

靴の踵を踏んだまま、あたしは野球部専用グラウンドに飛び出した。
と、友達がいっつもうわ言のようにカッコイイカッコイイと言っていた、金髪のキャプテンを発見する。
見つからないし聞いちまえ!

「すーいーまーせぇーん」

「ん?なんだい?」

うわっ、笑顔が眩しいわ。
三年生のお姉さま方及びあたしの友達がクラクラッと来るのも頷けるわ。
いやいや、そうじゃなくって。

「あの、司馬葵に用があるんですけど・・・・」

「ああ、一年生は今部室でストレッチしてるから。ちなみに部室はあそこだよ」

そう言って、御丁寧に指で部室を指し示してくれた。
すいません、お手数かけました。
心の中で謝って、あたしはぺこりと一礼して。
一目散に、愛しい人の元へ。





「失礼しまっす!!」

ズバァンと、扉が吹っ飛ぶくらいの勢いであたしは扉を蹴り開けた。
中に居た殆どの部員が、目が点になってるのも構わずに。
あたしは無遠慮にきょろきょろと薄暗い部室を見渡した。
と、視線を巡らせてたら犬飼と目が合った。

「ああ、あたしガングロなんかに興味ないのよ」

「・・・・は?」

あきらかに呆然とした顔。
誰だか判らないヤツが横から口を挟んできた。

「オマエ俺以外のヤツにもガングロって言われてやんのー!!」

そんな事を言われても、まだ犬飼は呆然としていた。
全く、ちょっと女にモテるからっていい気になるなっつぅの。
さて・・・司馬は何処かな?

「あれ〜?もしかして今朝の?」

まさしく天からの救いだわ。
兎丸は独り。つまりは司馬は今一人!
でも・・・部室に居ない?
兎丸に聞いてみようか?

「あのさ、司馬って今何処に居る?」

「シバくんなら忘れ物したから教室行ったよ〜?けどもう帰ってくると思うけど・・・・」

行かなくちゃ。戻ってくる前に。
行って、渡して。そして自分の気持ちを伝えてやるわ。
あたしは風になる。





「・・・・・司馬!」

「・・・・・・・・・・?」

呼び止めて。司馬の前方から走り寄る。
待っていて。
今すぐ思い、伝えるから。



スキ。スキスキスキ。
ダイスキ。




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毒苺レイナさまに捧げ夢。
なのにこのヘボイ仕上がりはどうでしょう・・・・・!!(がたがた)
スイマセン、いきなりこんなものを押し付けてしまって(汗)
受け取ってやってくださいませ。
一応相互リンク記念です。記念になるかならないか瀬戸際ですが。

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きゃあ〜vv
ありがとうございますっ!私の電車通なのでたっぷり夢を見させていただきましたっvv
司馬くん司馬くん〜vふふふ私も明日あたり倒れてみようかしら…(死ぬぞ)
こちらこそ相互してくださってありがとうございます〜!
素敵な夢をありがとうございましたv