世界でいちばん好きなヒト









男の人は優しい方がいいと思う。
なんて当たり前なんだけど。
たまにいるでしょ、勘違いしちゃってるやつ。
自分が一番みたいな。
現に私の知ってるやつにもいるんだけど・・・。
まぁそいつのことはおいといて。
私の好きな人は誰より優しい。
一緒に歩く時は絶対、車道側歩いてくれるし?
重そうなもの持ってると持ってくれるし。
すごく優しくて大好きなんだけど、その優しさがたまに痛いよ ・・・。
私がいけないのに怒らない時。
私以外の女の子に優しくしてる時。
後者に関してはただの嫉妬だけれど、やっぱり好きな人には自 分だけでいてほしいから。
無理な注文なのかな・・・。

先輩?どうしたんですか?」

「あ、長太郎・・・。なんでもないよ。」

嘘。
こんな顔してなんでもないなんてことない。
長太郎に心配して欲しくて、こんなこというなんてサイテー。

「そうですか。ならいいんです。」

また胸のあたりがチクッとした。
こういう時、長太郎は絶対に追及してこない。
されても困るけど、ちょっとはして欲しいなんて、ワガママ?

「なんで、何にも聞かないの・・・?」

「え?なんでって。先輩が言わないのはいいたくないからかな 、と思って。言いたくないことを無理にいう必要はないんです よ。」

「でも、気にならない?」

「気にならないって言えば嘘になりますけど、聞かれたくない こともあるでしょうし。」

それが長太郎の優しさなのか、少し考えてしまった。
優しい、それだけじゃないような気がして・・・。

「私、今までに長太郎に何か追及されたことない・・・。」

「そう、でしたっけ?」

「なんで聞かないのかな、っていつも思ってた。」

感情に任せて、言わなくてもいいことを口走りそうになる。
自分を抑えようとした。
したけれど、もう遅い。

「私のこと好きじゃないの?だから、興味がないだけ?」

「なっ!そんなことないです!!」

長太郎はむきになって反論した。
私もやめておけばいいのに、言いたいことが次から次へと溢れ 出して、もう止まらない。

「長太郎の優しさって何?何も聞かないこと?・・・違うよ。 私は長太郎に聞いて欲しかったよ。」

先輩・・・。」

溜め込まないで言えばよかったことなのに、なんで今更・・・ 。
私の言葉が長太郎を傷つけてる。
そんなことがしたいわけじゃないのに。
もう、どうしたらいいかわかんない。

「俺は先輩が誰より好きです。聞かなかったのは、聞くの がこわかったから・・・。都合のいい優しさにしてただけなん です。」

「ちょ...たろ・・・。」

長太郎の本音をはじめて聞いた気がした。
お互い本音を言えなかったことが、今回のことを招いたんだ。

「俺もちゃんといいますから、何でも言って下さい。」

「じゃあ、他の女の子に優しくするのやめて。」

「はい?」

「長太郎、誰にでも優しすぎるのよ!それは・・・私だけでい いんだから。」

言いたいことをいって、胸の中はなんだかすっきりした。
長太郎も同じ気持ちだといいな。

「ぜ、善処します。でも、それをいうなら先輩だって!忍足先 輩や向日先輩とあんまり仲良くしないで下さいよ!!」

「え?だってクラスメートだし。」

「俺は学年も1コ下だし、色々心配なんですから。」

ちょっと赤くなっていう長太郎がなんだか可愛くて、思わず笑 ってしまった。
そして、抱きついてみる。

「私は長太郎が一番好き。心配することなんてちっともないん だよ?それとも私が信じられない?」

「信じてます、信じてますよ。でも、好きだから心配なんです 。・・・先輩、美人だし。」

長太郎が私の腰に手をまわして、そう言った。
そういう風に言ってもらえること。
私、ホントはすごく恵まれてたんだな、って実感する。

「二人しておんなじような心配してたんだね。長太郎が私のこ とそんなに好きだなんて知らなかったわ。」

「先輩、キスしていいですか?」

「は、はいっ?!何いきな・・・っん。」

突然長太郎に口唇を塞がれた。
ちょっと誤魔化された気がしたけど、ま、いっか。
私の世界でいちばん好きなヒトはここにいる・・・。

















END


















90000HITおめでとうございます!
ということで、書き上げるまでレイナ嬢に内緒にしておりまし た。
長太郎(の夢)を貴方に差し上げます。
返品不可ですので、煮るなり焼くなりお好きなように(笑
シリアスにみせかけて、そうじゃなかったり。
でも、ラブラブなんです。
腰に手、っていうのがポイントです(爆
年下設定が嫌いだったらゴメンナサイ。
ではでは。

2003.10.8 未星ケイ