ワーーーーーーーー
    ワーーーーーーーーー





暑い日だった。
会場に高らかに挙がる奇声。歓声。熱に浮かれた人達。
王城の桜庭が来ている事もあって、今日は一段と渋滞が酷い。
女のスカートが走ってきては激しく揺れ、走ってきてはまた、ゆれ続ける。


                                                ワ―――――――

「蛭魔」



糞デブが俺を咎めた。
知っている。
おまえなんかに言われなくても、白いスカートがのんびり歩いていない事ぐらい、
俺が一番よく知っている。




ピィーーーッ




短く集合のホイッスルが鳴る。
天然芝の感触がスパイクの棘をを優しく包みこみ、俺はフィールドに二本脚で立った。
暑い。
この季節にしてはなかなかにして暑い空気で、試合が始まる前から、なんとはなしに
ユニフォームがしめりを訴えていた。

無視する。

肌にまとわりついたのは服だけではない。
視線だ。絶対にない視線が俺の肌に纏わりついている。 いや、纏いたい。
支離滅裂のようで、変に落ちついていた頭を誰かが後ろから小突いた。
なんだ、また糞デブか。
変な顔するな。
大丈夫だって。王城に一点でも入れるんだ、今日は。そうだろ?


だから、


「……一点でも、いれようね」

「バー――――カ。勝つんだよ。行くぞ、ファッキンデブ」





ワ―――――――――――









時間が戻らないなんて、そんなつまらない事、思わせないでくれ。