帰り道、咲いていた花に目を奪われた。
涙が、でそうに、なった。

HAPPINESS

「それでね、大河に何あげたらいいかなぁ」

唯一無二の親友の彼女は、首を傾げて聞いてきた。
猪里は一緒になって首をかしげる。

「何がいいとね？」
「大河の好きそうなもん･････････なにがあったっけなぁ」

公園のベンチに座り込んで二人して考え込む。
ここにいない、虎鉄の事を考えて。

『あのね、猪里君。相談に乗ってほしいんだけどいいかな？』
そう言って彼女に呼ばれ。
珍しくも早く終わった部活の帰りにここでこうして悩んでいる。

「･･･あー駄目、思いつかないや･･････大河のほしそうなもん」
眉間に皺を寄せては真剣に唸っている。
その様子に、猪里は思わず苦笑した。
「何がよかとねー」

こぼれた言葉は自分でも予想してないほど苦々しかった。

『私と･･････大河付き合って半年なの。
それで何かあげようと思ってるんだけど何がいいかなぁ？』

しっとったよ。覚えとったよ。
もう、あれから半年になるとね。
嬉しそうにちゃんが俺んとこに来た日をよう覚えとう。

寒い日だった。
猪里のいた教室に駆け込んできたのあの嬉しそうな笑顔。
昂揚して赤くなった頬、走ってきてぐちゃぐちゃになった髪の乱れの一本まで。
あの目の輝きすら、猪里の脳裏に鮮明に残っている。

そして、その後告げられた歓喜の声までも。

『猪里君！協力してくれてありがとう！！
虎鉄ね、･････････虎鉄も私のこと好きだって』

正直、その時上手く笑えたかどうかなんて自信は猪里にはなかった。

『そう　　　　　　　　　　　　　　　良かった』

心では動揺しながら。
猪里は、精一杯笑った。

そうか　　　　虎鉄も　　　　　ちゃんを

『猪里君が相談に乗ってくれたおかげだよ！！
ありがとう！！』

その笑顔が好きで、好きで、好きで。

『どういたしまして』

本当はその恋の破局を願っていたのだと。
自分の気持ちに気付いて、情けなくて、惨めで。

『おめでとう』

笑っていったけれど、今もまだ心を引きずっている。

「ん･･････新しいバンダナとかどうと？」
「あ、それいい考え！！さすが、猪里君」

の笑顔につられて猪里も笑う。
この半年間でついた癖。

「あ、そうだ！猪里君。手だして、目を瞑って」
「？」

唐突にいわれた言葉のとおりにする。
目を瞑って、手を前に出して。

がさり。

手に乗った無機物の感触に思わず目を開けた。
手に乗っていたのは、透明なラッピング袋に包まれた

猪のぬいぐるみ。

「･････････？」
「えへへ。猪里君、忘れてたみたいだから言っとくと、私と猪里君と大河、今日で出会ってちょうど一年なんだよ」

大河には今度バンダナあげるからいいとして、猪里君には今日渡したかったんだ。
可愛いでしょう？
そう言って微笑むの笑顔につられて。

「？嘘、何で猪里君泣くの！？」
ぽたぽたと涙が落ちた。
みっともなくて無理やり止めようとするけれど上手くいかない。
出会ったときのことなんて。

例えばがいやに元気よく笑いかけてきたことなんて。
猪里よりも虎鉄のほうがまず先にその手を取ったなんて。
笑いながら二人とも、動物の名前が入ってるんだとが呟いたことなんて。
（しかもそれが学校にちなんで十二支だなんて言い出してまた笑ってた）
酷く猪里が照れてしまって手を差し出さなかったのを強引にが手を握って握手にしたのも。

とっくの昔に忘れられてると思った。

「どうしたの！？」
「嬉しいちゃ」

愛しくて、たまらない。
その驚いた表情も、なにやら崩れた猪の(正確には瓜坊の)ぬいぐるみも。
道に咲いていた、小さな花も。
全て全て全て。

愛しくて。

「あー、もうびっくりした。突然なんだもん」
はそうはいいながらもそれでもやっぱり笑っていた。
「あー、すまんちゃ。何か･･････止まんなかったと」
羞恥で猪里は顔を赤くする。

「ありがとうとね」
「どういたしまして」

が笑って、猪里も笑った。

道に咲いていた小さな花に目を奪われて。
涙がでるかと思った。

涙がでるほど、幸せだった。

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相互リンクのお礼に。毒苺レイナ様に。
何かすんげー唐突にリンクとか申し出て何様だ,私。って感じだったのに本当に心暖かく迎えてくださってありがとうございます。
このご恩は一生忘れません(笑)

リクエストは『Poorの続きっぽく、猪里が幸せな夢』でした。
幸せ･･････なつもりです一応（汗汗)ご期待に添えなく申し訳ないです〜。
幸せなんだかこの上なく惨めなんだか(滝汗)

貰っていただければ光栄です。
これからもよろしくお願いしますね！！